

年金から引かれるものは?手取りはいくら?月額別の早見表と計算方法を税理士が解説
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「年金からは何が引かれる?」「額面どおりの金額を受け取れるわけではない?」と気になる人もいるでしょう。
公的年金からは、受給額や所得などの条件に応じて、所得税・住民税・介護保険料・健康保険料などが差し引かれます。そのため、実際に振り込まれる手取り額は、年金の額面より少なくなる場合があります。
また、税金や社会保険料がいくら引かれるかは、年金額や年齢、家族構成などによって異なります。
本記事では、年金から引かれる税金・社会保険料の種類や金額の目安、手取り額の計算方法についてわかりやすく解説します。
- 年金からは所得税・住民税・介護保険料・医療保険料の4種類が引かれる
- 年金の手取り額は額面の85%〜95%が目安で、収入が多いほど手取り率は下がる
- 所得控除の活用や確定申告で引かれる額を減らせる可能性がある
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年金から引かれるものは?主な5つ【一覧】

老後の年金からは、税金と社会保険料が差し引かれます。これを「天引き」と呼び、法律に基づいて自動的に徴収される仕組みです。
具体的には、以下の5つの項目が年金から引かれます。年齢によって加入する医療保険制度が変わるため、引かれる項目も変化します。

国民健康保険料(75歳未満)/後期高齢者医療(75歳以上)/介護保険料(65歳以上)
年金から引かれる社会保険料は、主に医療保険料と介護保険料の2種類です。
医療保険料
65歳から74歳までの人は「国民健康保険料」が、75歳以上の人は「後期高齢者医療保険料」が引かれます。75歳になると、それまで加入していた健康保険から後期高齢者医療制度へ自動的に移行するのが特徴です。
介護保険料
介護保険料は、40歳から支払い義務が生じますが、年金からの天引きが始まるのは65歳以上になってからです。65歳になると「第1号被保険者」という区分に変わり、原則として年金から差し引かれる形で保険料を納付します。
所得税(源泉徴収)/住民税(特別徴収)
年金は、税法上「雑所得」として扱われるため、所得税と住民税の課税対象となります。
所得税
1年間の年金収入が一定額を超える場合、所得税(および復興特別所得税)が「源泉徴収」という形で天引きされます。源泉徴収とは、年金の支払者(日本年金機構など)が、あらかじめ税金を差し引いて年金を支払う仕組みです。
住民税
住民税は、前年の所得に基づいて計算され、居住している市区町村に納める税金です。65歳以上の年金受給者の場合、公的年金にかかる住民税は「特別徴収」として年金から天引きされます。
ただし、年金受給者には「公的年金等控除」という税制上の優遇措置があるほか、基礎控除などの各種所得控除も適用されるため、年金収入のみの場合、税金がかからないケースも少なくありません。


【早見表】年金の手取りはいくら?月額別・年齢別

年金の支給額から税金や社会保険料が引かれた後の「手取り額」は、総支給額のおおよそ85%〜95%が目安です。ただし、年金額や年齢、家族構成、居住している地域によって変動します。
ここでは、具体的な年金額ごとの手取り額の目安を早見表とモデルケースで見ていきましょう。


年金月額別の手取り早見表
年金の月額(額面)ごとの手取り額と手取り率の目安は、以下のとおりです。
【年金手取り額の早見表(65歳以上・単身世帯の例)】
東京都23区在住、収入は公的年金のみ、各種控除を適用した概算額です。
年金収入が増えるほど、税金や社会保険料の負担も増えるため、手取り率が下がっていく傾向にあります。
単身・夫婦のモデルケース計算(65歳/75歳)
手取り額は、年齢や家族構成によっても変わります。ここでは、単身世帯と夫婦2人世帯のモデルケースを見てみましょう。
【単身世帯・年金月額15万円(年額180万円)の場合】
- 65歳〜74歳:国民健康保険料と介護保険料、住民税などが引かれ、手取り月額は約13万7000円(手取り率 約91%)が目安です。
- 75歳以上:国民健康保険料から後期高齢者医療保険料に切り替わります。一般的に保険料負担が少し軽くなる傾向があります。
【夫婦2人世帯・合計年金月額21.1万円(夫:厚生年金14万円、妻:国民年金7.1万円)の場合】
- 夫65歳、妻65歳:所得税や住民税は非課税ですが、世帯主の年金から国民健康保険料、夫婦それぞれの年金から介護保険料が引かれます。世帯全体での手取り月額は約20万円(手取り率 約95%)が目安です。年金額が多く税金がかかってくる場合でも、配偶者控除などが適用されるため、単身の場合より手取り率は高くなる傾向があります。
これらの金額はあくまで一例です。正確な金額は、毎年送られてくる「年金振込通知書」で確認できます。
引かれる額は所得・居住地・年齢で変わる

年金から引かれる税金や社会保険料の金額は、すべての人で一律ではありません。主に以下の3つの要因によって、一人ひとり金額が異なります。
所得
年金の受給額や、年金以外の所得(給与所得や不動産所得など)が多いほど、所得税・住民税や社会保険料の負担は増加します。社会保険料は所得に応じて段階的に保険料が設定されているため、所得が金額を決定する要素です。
居住地
住民税や国民健康保険料、介護保険料は、住んでいる市区町村によって税率や保険料率、基準額が異なります。そのため、同じ年金額でも居住地が違えば、手取り額に差が出ることがあります。
年齢
年齢によって加入する医療保険制度が変わります。75歳を境に国民健康保険から後期高齢者医療制度へ移行するため、保険料の計算方法や金額が変わります。また、介護保険料の年金天引きは65歳から始まります。
なぜ年金から引かれる?特別徴収の仕組み

年金から税金や社会保険料が天引きされることを「特別徴収」といいます。この仕組みは、年金受給者の利便性向上と、行政の徴収業務の効率化を目的として導入されています。
特別徴収の目的
- 納付漏れの防止:自動的に天引きされるため、年金受給者が納付を忘れることを防ぎます。
- 徴収事務の円滑化:個別に納付書を送付したり、納付状況を確認したりする行政側の手間を省き、効率的に徴収を行えます。
特別徴収の対象者
原則として、老齢年金などの対象となる年金を年額18万円以上受給している人が対象となります。年金額が18万円未満の場合や、年度の途中で65歳になった場合などは、一時的に納付書で自分で納める「普通徴収」になります。
受給者にとっては、金融機関などへ支払いに行く手間が省けるというメリットがあります。
(参考:年金から介護保険料・国民健康保険料(税)・後期高齢者医療保険料・住民税および森林環境税を特別徴収されるのはどのような人ですか。 | 日本年金機構)
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年金から引かれるお金を減らす方法
年金から引かれる税金や社会保険料の負担を、合法的に軽減する方法がいくつかあります。
所得控除の活用や各種申請を適切に行うことで、手取り額を増やすことにつながります。


所得控除(医療費・社会保険料・配偶者/扶養)
所得税や住民税は、所得(年金収入から公的年金等控除を引いた額)からさらに「所得控除」を差し引いた「課税所得」を基に計算されます。所得控除を漏れなく適用することで、課税所得を減らし、税負担を軽減できます。
年金受給者が活用できる主な所得控除は以下のとおりです。
- 社会保険料控除:年金から天引きされた、または自分で納付した国民健康保険料や介護保険料の全額が控除の対象です。
- 配偶者控除・扶養控除:生計を1つにする配偶者や親族の所得が一定額以下の場合に適用できます。
- 医療費控除:1年間に支払った医療費が10万円(または総所得金額等の5%)を超えた場合に適用できます。自分だけでなく、生計を1つにする家族の医療費も合算できます。
これらの控除を受けるためには、日本年金機構へ「扶養親族等申告書」を提出したり、確定申告を行ったりする必要があります。
確定申告・申請

年金から所得税が源泉徴収されている場合でも、確定申告をすることで払い過ぎた税金が戻ってくる(還付される)可能性があります。
以下のような控除は、確定申告をしないと適用されません。
- 医療費控除
- 生命保険料控除(年金から天引きされていない保険料)
- 寄付金控除(ふるさと納税など)
- 雑損控除(災害や盗難による損害)
また、公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ年金以外の所得が20万円以下の場合など、一定の条件を満たせば確定申告は不要です。
しかし、上記のような控除を適用して還付を受けたい場合は、確定申告を行うのがよいでしょう。
(参考:ご存じですか?年金受給者の確定申告不要制度 | 政府広報オンライン)
免除・軽減制度
所得が一定基準以下の場合、住民税や社会保険料の負担が軽くなる制度があります。
住民税非課税世帯
世帯全員の所得が自治体の定める基準以下で、住民税が課税されない世帯を「住民税非課税世帯」といいます。この基準は自治体や家族構成によって異なります。
住民税非課税世帯に該当すると、税金の負担がなくなるだけでなく、以下のようなメリットがあります。
- 介護保険料の負担が軽減される
- 国民健康保険料や後期高齢者医療保険料の均等割額が軽減される
- 高額療養費制度の自己負担限度額が低く設定される
- 自治体独自の給付金や福祉サービスの対象となる場合がある
自身の世帯が該当するかどうかは、居住している市区町村の窓口で確認できます。
年金の手取りを増やす対策
引かれるお金を減らすだけでなく、受け取る年金の額面自体を増やすことも、手取り額を増やすための対策の1つと考えられます。
現役時代や年金受給開始後の選択によって、将来の年金額は変えられます。

繰下げ受給
年金の受給開始は原則65歳からですが、この開始時期を66歳から75歳までの間に遅らせることを「繰下げ受給」といいます。
受給を1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増額され、70歳まで繰り下げると42%、上限である75歳まで繰り下げると最大で84%も年金額を増やせます。増額された年金額は、生涯にわたって受け取ることができます。
例えば、65歳で月15万円の年金を受け取れる人が70歳まで繰り下げた場合、月々の受給額は約21万3000円になります。
ただし、繰り下げている期間は年金を受け取れないため、繰下げ期間中の生活費をどう確保するかがポイントです。
60歳以降も厚生年金で就労

60歳以降も会社員などとして働き、厚生年金に加入し続けることで、将来受け取る老齢厚生年金を増やすことができます。厚生年金は70歳まで加入可能です。
長く働くほど保険料を納める期間が長くなり、その分が年金額に反映されます。例えば、年収300万円で60歳から65歳までの5年間働いた場合、年間の受給額は約8万円増える計算になります。
働きながら年金を受け取る場合は、給与と年金の合計額に応じて年金の一部が支給停止される「在職老齢年金」の仕組みも理解しておく必要があります。
国民年金の任意加入
国民年金の保険料納付期間は原則として20歳から60歳までの40年間(480ヶ月)です。
この期間中に未納や免除の期間があり、納付月数が480ヶ月に満たない場合、60歳から65歳までの間に国民年金に「任意加入」することができます。
任意加入して保険料を納めることで、満額である480ヶ月の納付に近づけることができ、その分、将来受け取る老齢基礎年金を増額できます。加入期間が1年間増えると、老齢基礎年金は年額で約2万円増える計算です。
学生時代の保険料納付を猶予されていた(学生納付特例)ものの、追納していない人などが対象となります。
年金から引かれるものに関するよくある質問
ここでは、年金から引かれるお金に関して、多くの人が疑問に思う点についてQ&A形式で解説します。


Q. 年金15万円の手取りはいくら?
年金月額15万円(年額180万円)の場合、65歳以上・単身の方の手取り額は月額で約13万7000円が目安です。
年金から社会保険料や税金が約1万3000円引かれる計算になります。ただし、居住している地域や家族構成によって金額は変動します。
Q. 年金月20万円の手取りはいくら?
年金月額20万円(年額240万円)の場合、65歳以上・単身の方の手取り額は月額で約17万3000円が目安です。
年金収入が増えると税金や社会保険料の負担も増えるため、手取りの割合は少し下がります。この場合、約2万7000円が天引きされる計算です。
Q. 65歳以上は年金からいくら引かれる?
引かれる金額は年金額や所得、居住地によって異なります。
例えば年金月額15万円(年額180万円)の単身世帯の場合、年間で約15万円(月額約1万3000円)が目安です。内訳は介護保険料、国民健康保険料、住民税などです。
Q. 年金から引かれる国民健康保険料はいくら?
国民健康保険料は、居住している市区町村と前年の所得によって決まります。
例えば、東京都23区在住で年金収入が174万円(雑所得64万円)の65歳単身者の場合、年間の保険料は約5万6000円です。所得に応じた軽減措置が適用される場合もあります。
(参考:国保の保険料の計算方法 | 文京区)
Q. 年金がいくらまでなら非課税?
65歳以上で収入が公的年金のみの単身者の場合、年収が155万円以下であれば住民税が非課税になります。
所得税については、2026年度の税制改正により基礎控除額が引き上げられ、年収が214万円以下であれば非課税になります。ただし、11月までの年金の支給は改正前の基礎控除額を基に源泉徴収が行われます。なお、配偶者や扶養親族がいる場合は、非課税となる年収の上限額はさらに上がります。
(参考:令和8年度税制改正による公的年金等に係る主な改正事項 | 日本年金機構)
Q. 引かれるものを減らすには?
医療費控除や配偶者控除などの「所得控除」を漏れなく活用することが考えられます。これらの控除を適用するには確定申告が必要な場合があります。
また、世帯の所得が一定基準以下の場合、住民税や社会保険料が軽減される制度もあります。
まとめ

年金生活が始まると、額面の金額から所得税、住民税、介護保険料、医療保険料が天引きされるため、実際に振り込まれる手取り額は少なくなります。
手取り額の目安は、額面の85%〜95%程度と考えておくとよいでしょう。
引かれる金額は、年金額や年齢、居住地、家族構成などによって一人ひとり異なります。各種所得控除を適切に活用したり、確定申告を行ったりすることで、税負担を軽減できる可能性があります。
また、繰下げ受給や60歳以降の就労など、受け取る年金額自体を増やす対策も選択肢の1つです。自身の年金手取り額を正しく把握し、計画的な老後資金の準備を進めましょう。
自身の年金手取り額を把握し、ゆとりある老後生活を送るためには、早めの準備が大切です。
まずは、将来必要になる資金額をシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
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ご留意事項
- 本記事は一般的な情報提供を目的として作成したものであり、特定の金融商品の取引を勧誘するものではありません。
- 本記事の内容は記事公開時または更新時点の情報に基づいています。制度・法令・税制等の変更により、現在の情報と異なる場合があります。
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監修

黒澤 伸
- 税理士/社会保険労務士/CFP®認定者
東京都出身。中央大学商学部会計学科を卒業後、東京国税局に入局。国税庁、東京国税局等に38年間勤務し、2023年に高松国税局長を最後に退官。同年、黒澤伸税理士事務所を開設し、2024年には社会保険労務士としても登録。現在は、税務・会計、社会保険、労働保険等の士業務を中心に、CFPとして事業者のトータルサポートを行っている。
執筆

マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。




