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年金繰下げで大損する人とは?後悔する前に知るべき5つの注意点を専門家が解説

年金繰下げで大損する人とは?後悔する前に知るべき5つの注意点を専門家が解説

年金2026/07/07
  • #60代
  • #老後資金

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年金の繰下げ受給は、受給額が増えるため老後資金対策として魅力的ですが、「繰り下げて大損した」という声も聞かれます。増額率だけを見て判断すると、思わぬ落とし穴にはまるかもしれません。

本記事では、年金繰下げで後悔する可能性のある5つのケースと、大損を回避するための具体的な対策を専門家が解説します。自身の状況に合った最適な選択をするために、ぜひ参考にしてください。

この記事を読んでわかること
  • 年金繰下げで損する可能性が高い5つのケース(加給年金、税負担増など)
  • 繰下げの損益分岐点は70歳開始で約82歳、手取りベースではさらに後ろ倒しになる
  • 基礎年金と厚生年金を別々に繰り下げるなど、大損を回避する柔軟な戦略がある


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なぜ「年金繰下げは大損」と言われるのか?

年金の繰下げ受給が「大損」と言われることがあるのは、受給額の増額というメリットの裏に、見過ごされがちなデメリットやリスクが潜んでいるためです。

確かに受給開始を遅らせるほど年金の額面は増えますが、税金や社会保険料の負担が増加するため、手取りは額面ほど増えないこともあります。また、自身の寿命や健康状態、家族構成によっては、65歳から受給したほうが総受給額が多くなるケースも存在します。

これらの要素を総合的に考慮せず、増額率だけで判断してしまうと、結果的に損をしてしまう可能性があるのです。

繰下げ受給の基本的な仕組み

老齢年金は、原則として65歳から受給が始まりますが、本人の希望により66歳から75歳までの間で受給開始時期を遅らせることができます。これを「繰下げ受給」といいます。

繰下げ受給の最大のメリットは、受給開始を1ヶ月遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増額される点です。この増額率は生涯にわたって適用されます。

ポイントの解説

例えば、70歳まで5年間(60ヶ月)繰り下げた場合、年金額は42%(0.7% × 60ヶ月)増額されます。上限である75歳まで10年間(120ヶ月)繰り下げると、最大で84%(0.7% × 120ヶ月)もの増額が見込めます。

人生100年時代において、長生きリスクに備えるための有効な選択肢の1つとされています。

(参考:年金の繰下げ受給|日本年金機構

増額率だけでは判断できない理由

年金の繰下げ受給を検討する際、42%や84%といった高い増額率に目が行きがちですが、それだけで判断するのは危険です。なぜなら、年金の「額面」が増えても「手取り」が同じ割合で増えるわけではないからです。

年金は雑所得として課税対象となり、所得税や住民税が課されます。また、国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)や介護保険料も年金収入に応じて変動します。

繰下げによって年金額が増加すると、これらの税金や社会保険料の負担も重くなるため、手取りの増加率は額面の増額率よりも低くなるのが一般的です。

さらに、何歳まで生きれば65歳受給開始の総額を上回るかという「損益分岐点」の問題もあります。寿命は誰にも予測できないため、増額率のメリットだけを見て繰下げを選択すると、結果的に損をする可能性も考慮する必要があります。

参考)繰下げ利用率のデータ

年金の繰下げ受給は、生涯にわたって増額された年金を受け取れる魅力的な制度ですが、実際の利用率はどの程度なのでしょうか。

2024年時点の統計では、繰下げ受給を選択した人の割合は国民年金の受給権者で2.4%厚生年金の受給権者で1.9%と、低い水準にとどまっています。

一方で、受給開始を早める「繰上げ受給」を選択した人は国民年金の受給権者で23.2%厚生年金の受給権者で1.2%と、多くの人が早期の受給を選んでいることがわかります。

このデータは、多くの人が繰下げによる将来の増額メリットよりも、早期の安定した収入確保や、健康なうちに年金を使いたいという意向を優先している可能性を示唆しています。

繰下げ受給を検討する際は、こうした一般的な傾向も参考にしつつ、自身のライフプランと照らし合わせて判断することが欠かせません。

(参考:令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況|厚生労働省年金局

年金繰下げで損する可能性が高い5つのケース

年金の繰下げ受給は、すべての人にとって有利な選択とは限りません。個人の状況によっては、かえって経済的な損失を招く「大損」につながる可能性があります。

ここでは、注意が必要な5つのケースを具体的に解説します。自身が当てはまらないか、確認しながら読み進めてください。

早期に亡くなると総受給額が少なくなる

繰下げ受給を選択したものの、増額された年金の元を取る前に亡くなってしまうと、結果的に65歳から受給していたほうが総受給額は多くなります。

繰下げ待機中に本人が亡くなった場合、遺族は「未支給年金」として、本来65歳から死亡月までに受け取れるはずだった年金を一括で請求できます。繰下げ受給はできないため、65歳時点の本来の年金額が支払われます。

しかし、年金を受け取る権利は5年で時効になります。例えば72歳で亡くなった場合、遺族が受け取れるのは直近5年分(67歳〜72歳)のみで、65歳〜67歳の2年分は時効で消滅してしまいます。

繰下げによって年金額を増やそうとしても、繰下げ待機中に死亡すると繰下げ受給はできないことを理解しておきましょう。

加給年金が受け取れなくなる(年の差夫婦は注意)

加給年金」は、厚生年金に20年以上加入している人が65歳になった時点で、生計を維持している65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもがいる場合に、老齢厚生年金に上乗せして支給される「年金版の家族手当」です。

この加給年金は、老齢厚生年金本体を受給していることが支給の条件です。そのため、老齢厚生年金を繰り下げている間は、加給年金を受け取ることができません。

例えば、夫が65歳妻が60歳という夫婦の場合、夫が老齢厚生年金を70歳まで繰り下げると、受給を開始する頃には妻が65歳に達してしまいます。

その結果、本来5年間にわたって受け取れるはずだった加給年金(2026年度の配偶者の加給年金額は、特別加算額を含めると年額42万3700円)が1円も支給されず、合計で約212万円の金額を受け取れない可能性があります。年の差のある夫婦は注意が必要です。

(参考:加給年金額と振替加算|日本年金機構

税金・社会保険料の負担増で手取りが減る

年金の繰下げ受給によって額面収入が増えると、それに伴い所得税や住民税、社会保険料の負担も増加する可能性があります。年金は「雑所得」として課税対象となるため、収入が増えれば納める税金も増えるのです。

国民健康保険料(75歳以上は後期高齢者医療保険料)や介護保険料も所得に応じて算出されるため、年金額の増加が保険料の引き上げに直結します。

この結果、「額面は42%増えたのに、手取りの増加は30%程度だった」という事態も起こり得ます。増額率だけを見て生活設計を立てると、思ったより手元にお金が残らないという現実に直面する可能性があるため、手取り額でのシミュレーションが不可欠です。

損益分岐点まで生きられないリスク

年金の繰下げ受給を検討する上で、判断材料の1つが「損益分岐点」です。これは、繰り下げて増額された年金の総受給額が、65歳から受け取り始めた場合の総受給額を上回る年齢を指します。

この年齢を超えて長生きすればするほど、繰り下げたことによるメリットが増していきます。

シミュレーション|何歳まで生きれば得になる?

繰下げ受給の損益分岐点は、受給開始年齢から約11年11ヶ月後、つまりおよそ12年後が目安となります。

以下の表は、受給開始年齢ごとの損益分岐点をまとめたものです。

受給開始年齢

繰下げ期間

繰下げ期間

増額率

増額率

損益分岐点(黒字化する年齢の目安)

損益分岐点(黒字化する年齢の目安)

66歳

繰下げ期間

1年

増額率

8.4%

損益分岐点(黒字化する年齢の目安)

77歳11ヶ月

67歳

繰下げ期間

2年

増額率

16.8%

損益分岐点(黒字化する年齢の目安)

78歳11ヶ月

68歳

繰下げ期間

3年

増額率

25.2%

損益分岐点(黒字化する年齢の目安)

79歳11ヶ月

69歳

繰下げ期間

4年

増額率

33.6%

損益分岐点(黒字化する年齢の目安)

80歳11ヶ月

70歳

繰下げ期間

5年

増額率

42.0%

損益分岐点(黒字化する年齢の目安)

81歳11ヶ月

75歳

繰下げ期間

10年

増額率

84.0%

損益分岐点(黒字化する年齢の目安)

86歳11ヶ月

例えば、70歳から受給を開始した場合、81歳11ヶ月を超えて長生きすれば、65歳から受給するよりも総受給額が多くなります。

ただし、これは税金や社会保険料を考慮しない「額面」での計算です。手取りベースで考えると、損益分岐点はさらに1〜2年後ろ倒しになると考えておくのが現実的です。

2024年の65歳男性の平均余命が約20年であることを踏まえると、70歳繰下げの場合、平均以上に長生きすると「得」をすることになります。

上記の損益分岐点は、税金や社会保険料の負担増を考慮しない額面ベースの計算であり、あくまで目安です。実際の手取り額での分岐点は個人の所得状況により異なります。

65歳時点の年金額が増額対象になる誤解

年金の繰下げ受給に関して、多くの人が誤解しがちな重要なポイントがあります。それは、繰下げによって増額されるのは「65歳になる前月までの加入記録に基づいて計算された年金額」に限られるという点です。

例えば、65歳以降も会社員として働き続け、厚生年金保険料を納付したとします。すると、加入期間に応じて年金額は増えますが、65歳以降に働いて増えた分の年金額は、繰下げによる増額(月0.7%)の対象にはなりません

ポイントの解説

仮に65歳時点の年金額が月10万円で、70歳まで繰り下げたとします。この10万円は42%増額されて月14万2000円になります。一方、65歳から70歳までの5年間働いて厚生年金が月1万円増えたとしても、1万円は増額されず、上乗せされるだけです。

結果、70歳から受け取る年金は月15万2000円(14万2000円+1万円)となります。「65歳以降に働いた分も42%増える」わけではないことを正しく理解しておく必要があります。


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繰下げで損する人・しない人の判断基準

年金の繰下げ受給は、すべての人にとって有利な選択とは限りません。個人の状況によって異なります。一概にどちらがよいとは言えず、自身の健康状態、経済状況、家族構成などを総合的に考慮して判断する必要があります。

ここでは、繰下げに向いている人と、避けたほうがよい人の特徴をそれぞれ解説します。

繰下げに向いている人の特徴

年金の繰下げ受給でメリットを享受しやすいのは、以下のような特徴を持つ人です。

  • 健康で長生きする見込みが高い人:損益分岐点(70歳繰下げで約82歳)を超えて長生きするほど、生涯の総受給額が増え有利になります。自身の健康状態や、ご家族が長寿であるかどうかも判断材料になります。
  • 65歳から70歳までの生活資金が十分にある人:繰下げ期間中は年金収入がゼロになります。期間中の生活費を、就労収入や貯蓄、個人年金などで問題なく賄える経済的な余裕があることが前提です。
  • 加給年金の対象外である人:65歳未満の配偶者や18歳未満の子どもがいない場合、繰下げによる加給年金の支給停止というデメリットを気にする必要がありません。
  • 65歳以降の収入が少ない、または厚生年金に加入しない働き方をする人:在職老齢年金による年金の支給停止を気にする必要はありません。

繰下げが向いていない人の特徴

一方で、年金の繰下げ受給が向いていないのは、以下のような特徴を持つ人です。

  • 健康に不安がある、または平均寿命より早く亡くなるリスクを考慮する人:損益分岐点に到達する前に亡くなった場合、総受給額で損をしてしまいます。
  • 65歳から70歳までの生活資金に余裕がない人:繰下げ期間中に貯蓄が底をついてしまうと、将来の増額分を受け取る前に生活が破綻しかねません。
  • 加給年金の対象となる家族がいる人:年の差のある配偶者がいる場合、繰下げによって数百万円単位の加給年金を受け取れなくなる可能性があります。

これらの特徴に当てはまる場合は、65歳からの受給や、後述する柔軟な受給方法を検討するのが賢明です。

大損を回避するための対処法

「繰下げ受給を選んだけれど、状況が変わってしまった」という場合でも、柔軟に対応できる制度が用意されています。一度決めたからといって後戻りできないわけではありません。ここでは、繰下げ受給で「大損」するリスクを回避するための具体的な対処法を3つ紹介します。

受給開始時期は自由に決められる

繰下げ受給は、一度「75歳まで繰り下げる」と自分では決めても、繰下げ待機中ならいつでも受給を開始することができます。65歳時に決めるのはその時点で受給しないということだけで、いつから繰下げ受給するかを決めるわけではないからです。

例えば、「70歳まで待つ予定だったが、68歳で急にお金が必要になった」という場合、その時点で年金の受給手続きを行えば、すぐに年金を受け取り始めることが可能です。

その際の増額率は、実際に繰り下げた期間に応じて計算されます。68歳で受給を開始した場合、3年間(36ヶ月)繰り下げたことになるため、年金額は25.2%(0.7% × 36ヶ月)増額されます。この増額率は生涯続きます。

当初の予定より増額率は低くなりますが、65歳から受給するよりも多い年金額を確保できるため、状況の変化に柔軟に対応できる有効な手段です。

65歳に遡って一括受給する選択肢

繰下げ待機中にまとまった資金が必要になった場合、「やはり65歳から受給していたことにしたい」と考えることもあるでしょう。そのようなケースに対応するため、65歳まで遡って年金を一括で受け取る方法があります。

ただし、この方法には注意点が2つあります。

  1. 増額は一切なし:65歳に遡って受給したとみなされるため、繰下げによる増額メリットはありません。
  2. 税金・社会保険料の急増:65歳からの年金が一括で年の所得として計上されるため、翌年の国民健康保険料などが大幅に高くなる可能性があります。

また、70歳を過ぎてから過去に遡って年金を請求する場合、「特例的な繰下げみなし増額制度」が適用されます。請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることになります。

年金の受給権には5年の時効があるため、70歳で遡及請求した場合、時効によって受給できない年金が生じることを防ぐために設けられた制度です。

事前にシミュレーションを行う

年金の繰下げで後悔しないための対策は、自身のライフプランに基づいたキャッシュフロー表(お金の将来設計図)を作成し、事前に詳細なシミュレーションを行うことです。

何歳時点で手元にいくら残るのか」「いつ、どのような支出が予想されるか」を具体的に数値化することで、初めて「年金の受給を遅らせても生活は大丈夫か」を客観的に判断できます。

ポイントの解説

シミュレーションを行う際は、平均寿命で亡くなるケースだけでなく、「予想より早く亡くなるケース」や「100歳まで長生きするケース」など、複数のシナリオを想定することが鍵となります。

長生きした場合にお金が不足しないかを確認することで、繰下げ受給が自身にとって本当に有効な「長生きリスク」への備えとなるかを検証できます。

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繰下げ以外の選択肢も検討する

年金の受給額を増やす方法は、繰下げ受給だけではありません。他の制度を組み合わせることで、より自身の状況に合った柔軟な戦略を立てることが可能です。ここでは、繰下げ以外の選択肢や、繰下げと組み合わせることで効果を発揮する方法を紹介します。

老齢基礎年金と老齢厚生年金を別々に繰り下げる

老齢年金は、国民年金から支給される「老齢基礎年金」と、厚生年金から支給される「老齢厚生年金」の2階建て構造になっています。この2つは、それぞれ別々のタイミングで受給開始時期を選択することが可能です。

この仕組みを活用すれば、繰下げ受給のデメリットを軽減しつつメリットを活かす戦略を立てることも可能です。

例えば、加給年金の対象となる配偶者がいる場合、老齢厚生年金は65歳から受給を開始して加給年金を受け取り、老齢基礎年金だけを70歳まで繰り下げて増額を図る、という方法が有効です。

これにより、加給年金の支給停止という損失を回避しながら、老齢基礎年金部分で将来の受給額を増やすことができます。自身の状況に合わせて、片方だけを繰り下げるという選択肢を検討してみましょう。

65歳から受給しながら働いて年金額を増やす

65歳以降も厚生年金に加入して働き続けると、繰下げをしなくても年金額を増やすことができます。65歳以降毎年9月1日を基準日として、過去1年間に納めた厚生年金保険料が年金額に反映され、その年の10月分から改定後の年金が支給されます。これを「在職定時改定」といいます。

ただし、注意点として「在職老齢年金」制度があります。65歳以降の給与や賞与(総報酬月額相当額)と年金(老齢厚生年金の報酬比例部分の月額)の合計が一定額(2026年度は65万円)を超えると、超えた額の半分の年金が支給停止されます。

65歳から年金を受給しつつ、働き続けることで年金額を上乗せしていくのも、老後資金を充実させるための有効な選択肢です。

(参考:在職老齢年金の計算方法

ケース別|受給戦略の考え方(単身者・夫婦世帯・自営業者・会社員)

最適な年金の受給戦略は、個人のライフスタイルや家族構成などによって異なります。ここでは、4つのケース別に考えられる戦略を紹介します。

単身者

加給年金の対象外であり、遺族への影響も少ないため、繰下げ受給のメリットを享受しやすいです。経済的に余裕があれば、70歳や75歳までの繰下げを積極的に検討するとよいでしょう。長生きリスクへの有効な備えとなります。

夫婦世帯

配偶者との年齢差が鍵となります。年下の配偶者がいて加給年金を受け取れる場合は、夫の老齢厚生年金は65歳から受給し、老齢基礎年金のみを繰り下げる戦略が有効です。

共働きでそれぞれが厚生年金に加入している場合は、夫婦それぞれの健康状態や収入を見ながら、片方だけ繰り下げるなどの調整も考えられます。

自営業者

受給できるのは老齢基礎年金のみのため、選択はシンプルです。会社員に比べて年金額が少ない傾向にあるため、経済的に可能であれば繰下げ受給で少しでも年金額を増やすことは、老後の生活の安定に繋がります。

会社員

老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方を受け取れるため、選択肢が豊富です。加給年金の有無、65歳以降の働き方(在職老齢年金の影響)などを総合的に考慮し、「両方繰下げ」「片方だけ繰下げ」「65歳から受給しつつ働く」など、最適な組み合わせを検討する必要があります。

年金繰下げに関するよくある質問

年金の繰下げ受給を検討するにあたり、多くの人が抱く疑問についてまとめました。制度を正しく理解し、不安を解消するためにお役立てください。

Q. 繰下げ受給は何歳まで可能?

年金の繰下げ受給は、66歳0ヶ月から75歳0ヶ月までの間で、1ヶ月単位で受給開始時期を選択できます。

75歳0ヶ月が上限となり、それ以降に繰り下げても増額率は84%で固定されます。手続きは、自身が年金を受け取りたいと思ったタイミングで行うことができます。

Q. 繰下げ中に亡くなったら遺族は受け取れる?

繰下げ待機中に本人が亡くなった場合でも、年金が全く受け取れなくなるわけではありません。遺族は「未支給年金」として、本人が65歳から亡くなった月までに受け取れるはずだった年金を一括で請求することができます。

ただし、この未支給年金には繰下げによる増額分は適用されず、65歳時点の本来の年金額で計算されます。また、年金の受給権は5年で時効となるため、例えば71歳で亡くなった場合、遡って請求できるのは直近の5年分のみとなり、65歳から66歳までの1年分は受け取れなくなる点に注意が必要です。

Q. 繰下げ受給を選ぶ人はどのくらい?

厚生労働省の「令和6年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、2024年度末時点で老齢厚生年金の受給権者のうち、繰下げ受給を選択している人の割合は1.9%でした。

この数字は年々少しずつ増加傾向にはありますが、依然として低い水準です。多くの人が、将来の増額よりも65歳からの安定した収入を重視していることがうかがえます。

繰下げ受給はまだ一般的な選択肢とは言えませんが、人生100年時代を見据え、今後選択する人は増えていく可能性があります。

まとめ

年金の繰下げ受給は、受給額を最大84%まで増やせるため、長生きリスクに備える強力な手段となり得ます。しかし、増額率のメリットだけを見て判断するのは危険です。「大損」を避けるためには、自身の状況を多角的に分析する必要があります。

損益分岐点に到達する前に亡くなるリスク、加給年金の支給停止、税金や社会保険料の負担増といったデメリットを正しく理解することが必須です。また、65歳以降に働いて増えた年金は増額の対象外であるという点も、見落としがちなポイントです。

幸い、受給開始時期は自由に決められたり、基礎年金と厚生年金を別々に扱ったりと、柔軟な対応が可能です。本記事で解説した判断基準や対処法を参考に、自身の健康状態、経済状況、家族構成などを踏まえ、後悔のない最適な受給計画を立てましょう。

自身の状況に合わせた最適な年金の受け取り方を判断するには、専門家のアドバイスを参考にすることも有効です。まずは自身の老後資金がどのくらい必要になるか、簡単な診断から始めてみませんか。 

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監修
西岡 秀泰
  • 西岡 秀泰
  • 社会保険労務士/ファイナンシャルプランナー

同志社大学法学部卒業後、生命保険会社に25年勤務しFPとして生命保険・損害保険・個人年金保険販売を行う。保有資格は社会保険労務士と2級FP技能士。2017年4月に西岡社会保険労務士事務所を開設し、労働保険・社会保険を中心に労務全般について企業サポートを行うとともに、日本年金機構の年金事務所で相談員を兼務。

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マネイロメディア編集部
  • マネイロメディア編集部
  • お金のメディア編集者

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