
世帯分離のデメリットとは?後悔しないための判断基準と対処法を専門家が徹底解説
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親の介護費用や自身の税負担を考え、「世帯分離」を検討しているものの、デメリットや手続き後の影響がわからず、一歩踏み出せない人もいるのではないでしょうか。
安易に手続きを進めると、かえって家計の負担が増えてしまう可能性もあります。
本記事では、世帯分離の主なデメリット、後悔しないための判断基準、そして具体的な対処法まで、お金の専門家が分かりやすく解説します。
自身の家庭にとって最適な選択をするための参考にしてください。
- 世帯分離には国民健康保険料の増加や扶養手当の喪失など7つの主なデメリットがある
- 医療費負担が多い家庭や扶養手当の額が大きい家庭ではデメリットが大きくなる傾向がある
- 後悔しないためには、事前に介護費用や保険料の変化を試算し、総合的な損益を計算することが重要
- 一度世帯分離をしても「世帯合併」で元に戻すことは可能だが、条件や注意点がある
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世帯分離とは?基本の仕組みを理解する
世帯分離の検討を始める前に、まずはこの基本的な仕組みを正しく理解しておくことが欠かせません。
制度の定義や目的を知ることで、自身の家庭の状況に合っているかを判断する最初のステップになります。
世帯分離の目的と利用される場面
同じ住所に住み続けながら、住民票上の世帯を複数に分ける手続きのこと
この手続きの主な目的は、世帯単位で算定される社会保障制度の負担を軽減することにあります。
具体的には、以下のような場面で利用されることが一般的です。
介護費用の負担軽減
親の所得が低く、子の所得が高い世帯では、世帯分離によって親の世帯所得が下がり、介護保険サービスの自己負担割合や高額介護サービス費の自己負担上限額が低くなる可能性があります。
国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料軽減
保険料は世帯の所得に応じて算定されるため、世帯分離によって親世帯が住民税非課税世帯などに該当すると、保険料が軽減されることがあります。
介護保険施設の食費・居住費の軽減
特別養護老人ホームなどの施設利用料は、世帯の所得状況に応じて負担限度額が設定されています。世帯分離で低所得世帯と判定されると、この負担限度額が下がり、結果的に施設費用を抑えられます。
これらのメリットを享受するためには、それぞれの世帯が生計を独立して立てていることが前提条件となります。
世帯分離の主なデメリット7つ
世帯分離は介護費用や保険料の負担を軽減する可能性がある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
デメリットを理解しないまま手続きを進めると、かえって家計全体の負担が増加し、「後悔した」という結果になりかねません。
注意すべき7つのデメリットを詳しく解説します。
①国民健康保険料が高くなる可能性
世帯分離によって、世帯全体の国民健康保険料が増加する可能性があります。
国民健康保険料は、所得に応じて計算される「所得割」と、加入者数に応じて計算される「均等割」に加えて、1世帯ごとに定額で課される「平等割」で構成されています。
世帯分離を行うと、これまで1世帯だったものが2世帯になるため、この「平等割」がそれぞれの世帯に課されることになります。
その結果、所得割や均等割が軽減されたとしても、新たに追加された平等割の負担によって、世帯全体で支払う保険料の総額が以前より高くなるケースがあります。
すでに保険料の減免措置を受けている世帯や、所得が低い世帯では、世帯分離による保険料軽減のメリットが小さく、平等割の増加分がこのまま負担増につながりやすいため注意が必要です。
住んでいる自治体によって平等割の金額や減免制度は異なるため、事前に市区町村の窓口で試算してもらうことが推奨されます。

②会社の扶養手当・家族手当が受けられなくなる
勤務先の福利厚生として支給される扶養手当や家族手当が、世帯分離によって受けられなくなる可能性があります。
これらの手当は法律で定められたものではなく、各企業が独自に設けている制度です。そのため、支給条件は企業によって異なります。
多くの企業では、手当の支給条件として「税法上または社会保険上の扶養に入っていること」や「生計を同一にしていること」を定めています。
世帯分離を行うと、住民票上は「生計が別」とみなされるため、会社の規定によっては手当の支給対象から外れてしまいます。
たとえ実態として親の生活を支えていたとしても、形式的に世帯が分かれることで手当が打ち切られるケースは少なくありません。
月々の手当額によっては、世帯分離による他のメリットを上回る損失となる可能性もあります。そのため、手続きを行う前に、必ず勤務先の就業規則を確認するか、人事・総務部門に問い合わせて支給条件を確認することが必須です。
③税法上の扶養控除が適用されなくなる
世帯分離をしても、生計を1つにしている実態があれば、税法上の扶養控除を引き続き受けることは可能です。
税法上の扶養は、住民票の世帯が同じかどうかではなく、「生計を同一にしているか」という実態で判断されるためです。
しかし、世帯分離を「生計を別にする」という理由で申請した場合、その後の税務調査などで「生計が別であるなら扶養控除の対象ではない」と判断されるリスクが生じます。
70歳以上の親を扶養している場合に適用される「同居老親等」の控除(所得税58万円)は、同居が条件です。
世帯分離が「同居しているが、生計は別」という状態を形式的に示すことになるため、この控除が認められなくなる可能性があります。
扶養控除が適用されなくなると、所得税や住民税の負担が増加します。
この税負担の増加額が、世帯分離によって得られる他のメリット(介護費用の軽減など)を上回ってしまうケースもあるため、慎重な判断が求められます。
④高額療養費制度の世帯合算ができなくなる
世帯分離のデメリットとして、高額療養費制度の「世帯合算」が利用できなくなる点が挙げられます。
高額療養費制度とは、1ヶ月の医療費の自己負担額が所得に応じた上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。
この制度には、同じ医療保険に加入している家族の自己負担額を合算できる「世帯合算」という仕組みがあります。
これにより、個人の負担額では上限に達しなくても、家族の分を合わせることで上限を超え、払い戻しを受けられる場合があります。
しかし、世帯分離を行うと、親と子はそれぞれ別の医療保険世帯として扱われるため、この世帯合算が適用されなくなります。
その結果、家族それぞれが個別に自己負担上限額を計算することになり、上限に達しにくくなります。
家族の中に慢性的な疾患を持つ人や、定期的に通院している人が複数いる場合、世帯合算が使えなくなることで、実質的な医療費負担が増加する可能性が高いため、注意が必要です。

⑤健康保険組合の扶養から外れる
子どもが会社員で、この会社の健康保険組合に親を被扶養者として加入させている場合、世帯分離によって扶養から外れる可能性があります。
被扶養者でいる間は、親自身が保険料を負担する必要はありません。
しかし、世帯分離を行うと、親は被扶養者の資格を失い、自身で国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入し、保険料を納付する義務が生じます。
これにより、世帯全体で新たな保険料負担が発生します。
健康保険組合によっては、世帯分離後も生計維持関係が認められれば扶養を継続できる場合もありますが、多くの場合は扶養から外れます。
これまで保険料負担がなかった分、この新たな支出は家計にとって大きな変化となります。
世帯分離による他の費用の軽減額と、新たに発生する保険料負担を比較検討することが不可欠です。

⑥行政手続きが煩雑になる
世帯分離の手続きそのものや、その後に発生する関連手続きが煩雑である点もデメリットの1つです。
まず、世帯分離を行うには、市区町村の窓口へ「世帯変更届」を提出する必要があります。
その際には、本人確認書類や国民健康保険資格確認書など、複数の書類を準備しなければなりません。
さらに、手続きを代理人が行う場合は委任状が必要です。
世帯分離後は、親子であっても住民票上は別世帯となるため、これまで不要だった委任状が、親の証明書を取得する際に必要となる等、以前よりも手間がかかると感じるかもしれません。
また、世帯分離にともない、健康保険の切り替えや、介護保険に関する登録内容の変更など、さまざまな付随手続きが発生します。
これらの手続きは1つひとつ行う必要があり、時間と労力がかかることを覚悟しておきましょう。
⑦介護保険サービス費用の世帯合算ができなくなる
医療費と同様に、介護保険サービス費用にも「高額介護合算療養費制度」という、世帯での負担を軽減する仕組みがあります。
これは、1年間の医療保険と介護保険の自己負担額を合算し、基準額を超えた場合に超過分が払い戻される制度です。
しかし、世帯分離を行うと、親と子の世帯が別々に計算されるため、この合算ができなくなります。
例えば、同じ世帯に要介護者が複数いる場合、世帯分離をするとそれぞれの自己負担額が合算されず、基準額に達しにくくなるため、払い戻しを受けられる機会が減少する可能性があります。
家族内で複数の人が介護サービスを利用している、あるいは医療と介護の両方で高額な費用がかかっている世帯にとっては、このデメリットは大きな負担増につながる可能性があるため、慎重な検討が必要です。

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デメリットが増加する状況・減少する状況
世帯分離のデメリットは、すべての家庭で同じように現れるわけではありません。
家庭の所得状況や家族構成、医療・介護サービスの利用状況によって、デメリットの影響は大きくも小さくもなります。
ここでは、どのような場合にデメリットが増加し、どのような場合に減少するのかを具体的に解説します。
デメリットが増加するケース
世帯分離のデメリットがメリットを上回り、結果的に損をしてしまう可能性があるのは、主に以下のようなケースです。
家族に医療費がかかる人が複数いる場合
高額療養費制度の「世帯合算」が利用できなくなるため、家族全体の医療費負担が増加する可能性があります。
会社の扶養手当や家族手当の金額が大きい場合
世帯分離によって手当が支給されなくなると、この減収分が介護費用の軽減額を上回ってしまうことがあります。
国民健康保険に加入しており、世帯全体の所得が低い場合
保険料の軽減メリットが少ない一方で、世帯数が増えることによる「平等割」の負担が増え、保険料総額が高くなる可能性があります。
親を税法上の扶養に入れており、扶養控除による節税効果が大きい場合
世帯分離が原因で扶養控除が適用されなくなると、所得税・住民税の負担が増加します。
これらのケースに該当する場合は、世帯分離によってかえって経済的な負担が増えるリスクが高いため、より慎重な検討が必要です。

デメリットが減少するケース
一方で、世帯分離のデメリットが比較的小さく、メリットのほうが増加する可能性が高いのは、以下のようなケースです。
親の収入が低く(例:年金収入のみ)、子の収入が高い場合
世帯分離により親世帯が「住民税非課税世帯」に該当しやすくなります。これにより、介護保険料や後期高齢者医療制度の保険料、介護サービスの自己負担割合などが大幅に軽減される可能性があります。

高額な介護サービスを継続的に利用している、または利用予定がある場合
親世帯の所得が下がると、高額介護サービス費の自己負担上限額が低くなります。
例えば、住民税課税世帯では月額4万4400円の上限が、非課税世帯では月額2万4600円や1万5000円に下がるため、毎月の負担を減らせます。
特別養護老人ホームなどの介護保険施設への入所を検討している場合
親世帯が住民税非課税世帯になると、「負担限度額認定」を受けられ、施設の食費や居住費が軽減されます。
これらのケースでは、国民健康保険料の増加や扶養手当の喪失といったデメリットを考慮しても、総合的に見て世帯分離のほうが経済的メリットは大きいと判断できる場合があります。
世帯分離で後悔した実例と理由
世帯分離は慎重な検討が必要な手続きです。メリットだけを見て安易に進めてしまうと、想定外の負担増に見舞われることがあります。
ここでは、実際に世帯分離を行って後悔したという実例を挙げ、この理由を掘り下げていきます。他者の失敗から学ぶことで、自身の判断に役立てましょう。
扶養手当の喪失で年間20万円以上の損失
ある家庭では、介護費用の軽減を目的として親との世帯分離を行いました。しかし、手続き後に会社からの扶養手当(月額2万円)が支給されなくなりました。
この会社では、扶養手当の支給条件に「同一世帯であること」が含まれていました。世帯分離によってこの条件を満たさなくなり、手当が打ち切られた結果、年間で24万円の収入減となりました。
一方で、世帯分離による介護費用の軽減額は年間で約10万円でした。結果として、差し引きで年間14万円もの負担増となり、「これなら世帯分離をしないほうがよかった」と後悔することになったのです。
会社の福利厚生のような独自の制度については、事前に支給条件を細かく確認することが重要です。
国民健康保険料が逆に高くなった
国民健康保険料の軽減を期待して世帯分離を行ったものの、かえって世帯全体の保険料が上がってしまったという事例もあります。
この家庭では、親の所得が低かったため、世帯分離をすれば親世帯の保険料は安くなると考えていました。
実際に親世帯の保険料は軽減されましたが、新たに「平等割」が親世帯にも課されることになりました。
子の世帯の保険料は変わらず、親世帯の保険料軽減額よりも、追加された平等割の金額のほうが大きかったため、世帯全体で支払う保険料の総額は年間で数万円増加してしまいました。
国民健康保険料の計算は複雑で、所得割や均等割のほかに、この平等割の存在を見落としがちです。
自治体によって制度が異なるため、事前のシミュレーションが不可欠です。
高額療養費の世帯合算ができず医療費負担増
親子ともに持病があり、定期的に通院している家庭での事例です。
この家庭では、これまで親子それぞれの医療費を「世帯合算」することで、毎月のように高額療養費制度の払い戻しを受けていました。
しかし、介護費用の負担を考えて世帯分離を行ったところ、医療費の世帯合算ができなくなりました。
その結果、親子それぞれの自己負担額が個別に計算されるようになり、どちらも1ヶ月の上限額に達しなくなってしまいました。
これにより、これまで受けていた高額療養費の払い戻しがゼロになり、実質的な医療費負担が増加しました。
世帯分離による介護費用の軽減額よりも医療費の負担増のほうが大きく、家計を圧迫する結果となりました。
医療費の負担が大きい家庭ほど、世帯合算が利用できなくなるデメリットの影響を強く受ける点には要注意です。
世帯分離のメリットとデメリットを比較する方法
世帯分離で後悔しないためには、手続きの前にメリットとデメリットを客観的に比較し、自身の家庭にとって本当に有利な選択なのかを冷静に判断することが不可欠です。
ここでは、具体的な比較方法として、3つのステップに分けて解説します。
介護費用の軽減効果を試算する
まず、世帯分離によって介護費用がどの程度軽減されるのかを具体的に試算します。確認すべき主な項目は以下の通りです。
介護保険の自己負担割合
世帯分離によって親世帯の所得が下がると、自己負担割合が2割や3割から1割に下がる可能性があります。現在利用しているサービスの費用に、変更後の負担割合を掛けて計算します。
高額介護サービス費の自己負担上限額
所得区分が変わることで、月々の自己負担上限額が下がります。例えば、課税世帯の4万4400円から非課税世帯の2万4600円に下がるなど、軽減効果が期待できます。
介護保険施設の食費・居住費
施設入所を検討している場合、住民税非課税世帯になることで「負担限度額認定」が適用され、食費・居住費が軽減される可能性があります。
これらの情報は、担当のケアマネジャーや地域包括支援センター、市区町村の介護保険担当窓口で相談しながら試算するとよいでしょう。
保険料・税金・手当の変化を確認する
次に、世帯分離によって増加する可能性のある負担や、失われる手当について確認します。これはデメリットの部分の金額を把握する作業です。
国民健康保険料・後期高齢者医療制度の保険料
市区町村の担当窓口で、世帯分離後の保険料がいくらになるか試算してもらいましょう。世帯全体の総額が上がるか下がるかを確認します。
税金の扶養控除
親を扶養から外した場合に、自身の所得税・住民税が年間でいくら増えるかを計算します。源泉徴収票などから自身の所得税率を確認すると、おおよそこの増加額がわかります。
会社の扶養手当・家族手当
勤務先の人事・総務部門に問い合わせ、世帯分離後も手当が支給されるかを確認します。支給されなくなる場合は、この年間の金額を算出します。
これらの項目を1つひとつ確認し、具体的な金額を把握することが鍵となります。
総合的な損益を計算する
最後に、これまでに試算したメリット(軽減される費用)とデメリット(増加する費用や失う収入)を合算し、年間の総合的な損益を計算します。
- (介護費用の軽減額)ー(保険料の増加額 + 税金の増加額 + 失う手当の額)= 総合的な損益
この計算結果がプラスになれば、世帯分離には経済的なメリットがあると判断できます。
逆にマイナスになる場合は、世帯分離によって家計全体の負担が増えるため、手続きを見送るほうが賢明といえるでしょう。
また、現在は医療や介護の利用が少なくても、将来的に利用が増える可能性も考慮に入れることが大切です。
短期的な視点だけでなく、中長期的な視点で損益をシミュレーションすることで、より後悔の少ない判断につながります。
世帯分離を元に戻すことは可能?手続きと注意点
世帯分離を行った後で、「やはり元の状態に戻したい」と考えることもあるかもしれません。
結論からいうと、一度分離した世帯を再び1つにまとめる「世帯合併」の手続きは可能です。しかし、手続きにはいくつかの条件や注意点があります。
世帯合併の手続き方法
世帯合併の手続きは、世帯分離と同様に、住んでいる市区町村の窓口で行います。「世帯合併届」という書類に必要事項を記入し、提出すれば手続きは完了です。
手続きの際には、一般的に以下の書類が必要ですが、自治体によって異なる場合があるため、事前に確認しておきましょう。
- 本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 国民健康保険資格確認書(加入している場合)
- 印鑑
- 世帯主との続柄を証明する書類(戸籍謄本など、必要な場合)
手続きは、本人または新しい世帯の世帯員が行うことができます。代理人が行う場合は、委任状が必要になることが一般的です。
元に戻す際の注意点
世帯合併の手続きを行う際には、いくつかの注意点があります。
まず、世帯合併の届出は、変更があった日から14日以内に行うのが原則です。期間を過ぎてしまうと、手続きが煩雑になる可能性があります。
また、世帯合併の申請が必ずしも認められるわけではありません。
例えば、世帯分離の理由が不適切であったと判断された場合や、実態として生計が別であるにもかかわらず合併を申請した場合などには、受理されないことがあります。
さらに、一度世帯合併を行うと、短期間で再び世帯分離をすることは、正当な理由がない限り難しい場合があります。頻繁な変更は、制度の趣旨にそぐわないと判断される可能性があるためです。
世帯を元に戻す際も、その後の生活や家計への影響を十分に考慮した上で、慎重に判断する必要があります。
世帯分離以外の介護費用軽減策
世帯分離は介護費用の負担を軽減する有効な手段の1つですが、デメリットも存在するため、すべての家庭にとって最適な選択とは限りません。
世帯分離が適さないと判断した場合でも、介護費用を軽減する方法は他にもあります。ここでは、代表的な3つの方法を紹介します。
高額介護サービス費の申請
高額介護サービス費制度は、1ヶ月に支払った介護保険サービスの自己負担額が、所得に応じた上限額を超えた場合に、超過分が払い戻される制度です。
この制度は世帯分離をしていなくても利用できます。
自己負担額の上限は、世帯の所得状況によって区分されており、例えば住民税課税世帯であれば月額2万4600円が上限となります。
上限を超えた場合は、市区町村に申請することで払い戻しを受けることができます。
多くの自治体では、一度申請すれば、その後上限を超えた月は自動的に払い戻される仕組みになっています。
介護サービスの利用料が高額になっている場合は、まずこの制度の申請が済んでいるかを確認しましょう。
介護保険サービスの見直し
現在利用している介護保険サービスの内容を見直すことも、費用軽減につながります。
ケアプランは、利用者の心身の状態や生活環境の変化に応じて、定期的に見直すことが推奨されています。
担当のケアマネジャーに相談し、現在のサービス内容が本当に必要か、過剰になっていないかを確認しましょう。
例えば、デイサービスの利用日数を調整したり、訪問介護の内容をより効率的なものに変更したりすることで、費用を抑えられる場合があります。
また、自治体によっては独自の助成制度や安価な配食サービスなどを提供している場合もあります。
ケアマネジャーに情報提供を求め、公的な介護保険サービス以外の選択肢も検討してみるとよいでしょう。
医療費控除の活用
1年間に支払った医療費や、特定の介護保険サービス費が一定額を超える場合、確定申告で医療費控除を申請すれば、所得税や住民税の還付を受けられます。
医療費控除の対象となるのは、納税者本人または「生計を1つにする」配偶者やその他の親族のために支払った医療費です。
ここで重要なのは、「生計を1つにする」という判断基準は、必ずしも同居や住民票上の世帯が同じであることを要件としていない点です。
つまり、世帯分離をして親と住民票上の世帯が別々になったとしても、子どもが親の医療費や介護費を負担しているなど、生計を支えている実態があれば、この費用を自身の医療費控除に合算して申告することが可能です。
介護費用の負担が大きい場合は、医療費控除を忘れずに活用しましょう。

世帯分離に関するよくある質問
世帯分離を検討する際には、さまざまな疑問が生じるものです。ここでは、よくある質問とこの回答をまとめました。
自身の状況と照らし合わせながら、判断の参考にしてください。
世帯分離すると住民税は安くなる?
世帯分離によって親世帯が住民税非課税世帯に該当した場合、親の住民税負担はなくなります。
しかし、世帯全体で見た場合、必ずしも安くなるとは限りません。
なぜなら、子どもが親を扶養に入れていた場合、世帯分離が原因で扶養控除が適用されなくなると、子どもの所得税・住民税が増加するためです。
親の住民税が非課税になるメリットと、子どもの税負担が増えるデメリットを比較して、総合的に判断する必要があります。
世帯分離すると国保は安くなる?
親世帯の所得が低い場合、世帯分離によって国民健康保険料が安くなる可能性があります。
これは、親世帯が低所得世帯向けの保険料軽減措置の対象となるためです。
しかし、国民健康保険料には1世帯ごとに課される「平等割」があるため、世帯数が1つから2つに増えることで、世帯全体の保険料総額は逆に高くなるケースもあります。
すでに軽減措置を受けている世帯では、平等割の負担増が直接影響するため注意が必要です。
実家暮らしで世帯分離するデメリットは?
実家で親と同居しながら世帯分離する場合も、これまで解説してきたデメリットは同様に発生します。
具体的には、国民健康保険料の増加、会社の扶養手当の喪失、高額療養費制度の世帯合算が利用できなくなる、といった点が挙げられます。
また、親の行政手続きを子どもが代理で行う際に、この都度委任状が必要になるなど、生活上の手間が増えることもデメリットといえるでしょう。
メリットとこれらのデメリットを総合的に比較することが肝となります。
まとめ
世帯分離は、介護費用や社会保険料の負担を軽減できる可能性がある一方で、国民健康保険料の増加や扶養手当の喪失など、かえって家計の負担を増やしてしまうデメリットも存在します。
後悔しないためには、手続きの前にメリットとデメリットを正確に把握し、自身の家庭の状況に合わせて総合的に損益を試算することが不可欠です。
医療費や介護費の利用状況、会社の福利厚生、税金の扶養控除など、確認すべき項目は多岐にわたります。
判断に迷う場合は、市区町村の窓口やケアマネジャー、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談し、客観的なアドバイスを求めることが賢明です。
ご家族で十分に話し合い、納得のいく選択をしましょう。
世帯分離を検討するきっかけは、将来の家計や介護への不安ではないでしょうか。
まずは、自身の老後にどれくらいの資金が必要になるのか、簡単なシミュレーションで確認してみることをおすすめします。
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監修
黒澤 伸
- 税理士/社会保険労務士/CFP®認定者
東京都出身。中央大学商学部会計学科を卒業後、東京国税局に入局。国税庁、東京国税局等に38年間勤務し、2023年に高松国税局長を最後に退官。同年、黒澤伸税理士事務所を開設し、2024年には社会保険労務士としても登録。現在は、税務・会計、社会保険、労働保険等の士業務を中心に、CFPとして事業者のトータルサポートを行っている。
執筆
マネイロメディア編集部
- お金のメディア編集者
マネイロメディアは、資産運用に関することや将来資金に関することなど、お金にまつわるさまざまな情報をお届けする「お金のメディア」です。正確かつ幅広い年代のみなさまにわかりやすい、ユーザーファーストの情報提供に努めてまいります。




